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2007.11.01

佐野元春とのダイアログ:グレートフルデッドのこと

IMG_0130.jpg佐野元春。ロッキンオン、サウンドストリートといった雑誌やラジオメディアを通して彼の言説にふれ、注目し、リスペクトしてきた、本人が僕の目の前にいる。

第一回「佐野元春ブロガーミーティング」に一人のブロガーとして参加するという貴重な体験を通して、音楽について様々考えた夜。すでに様々な方この様子エントリーしている

絶えず移動し身体を揺らしながら、自らの音楽活動の軌跡を語る彼の声が、穏やかではあるが、力強く、逞しいエネルギーをもって、響いてくる。すでに参加した人が様々、書かれているように、自らの音楽活動の軌跡を語りつつ、その時どう感じたのか、何を思い、なぜそういう行動をとったのか、その時のことを思い出しながら、真摯に語ろうする姿はとてもしなやかで、かっこよかった。

彼はリスナーを信じている。音楽のすばらしさを深く理解している。音楽が産業化してしまったことによって壊された諸々を復権するために、自らレーベルを作り、仲間と緩く連帯し、それを活性化させるための手段としてネットの可能性にかけている...。そしてまさにそれは、現在形だ。

その話を聞きながら、僕はあるバンドのことを思い出していた。グレートフルデッドというロックバンド。

1965年に結成された伝説のロックバンドでありライブ即興が得意のジャムバンド。即興、すなわち観客とのコミュニケーションを信条とする。

このバンドの大きな特徴は、ファンのコミュニティ。ヒットチャートには無縁、しかしながらライブの集客力は全米でも屈指のバンドだった。リーダーであるジェリー・ガルシアが1995年になくなるまでの30年、グレートフルデッドはデッドヘッズと呼ばれる熱狂的なファンたちに支えられてヒットチャートにも乗らずに生き延びてきた。

彼らの活動はとてもユニークで、ファン同士の交流で録音されたライブ演奏がやりとりされる、それをサポートするためにライブ会場にファン専用の録音場所が用意されるケースもあったという。

録音、配布されることを前提にライブがある。ファンの交流のなかで楽曲が配布され拡散する仕組みが草の根でできあがっていた。彼らもそうした交流に非常に寛容だった。

楽曲を自由に楽しむ姿勢、消費するのではなく、当事者として参加すること、プレイヤーと観客が、とても良い感じで繋がっている。グレートフルデッドがもたらした仕掛け、仕組みは、すごく新鮮で、今ここにいても新しい。

そして、いま目の前の彼が語ってくれたこと、理想とグレートフルデッドの実践とが、底の方で繋がっている。そんな気がした。しかしながらデッドヘッズを生み出したグレートフルデッドのようなバンドは、似たような形はいくつかあったにせよ、大きな流れにはならなかった。まして日本では制度や社会構造的な強固な既成業界の仕組みの前で、理想を実現するためには様々なギャップを乗り越えなければならない。その壁をどうやったら乗り越えられるのだろう。リスナーとプレイヤーの理想的な関係は、たぶんこの近くにあるに違いないのに…。

そんな、ぼんやりとした僕の問題意識を彼にぶつけてみた。

グレートフルデッドの例はとてもいい例だと彼は言った。彼らに続くバンドもいくつか出てきている。ネットという道具の進歩で、理想は少しずつでも実現していくに違いない。リベラルな雰囲気とかあの時代のカウンターカルチャー的な時代の風潮が彼らの活動を支えた面もある。ただ、そういう、リスナーとアーティストのよい面が、メジャーレーベルが台頭し、ロックが産業化していくと同時にアーティストとリスナーの信頼が希薄になってしまった。今はそれを取り戻す時代だ。ルネサンスさ。

今、できることを、自前主義で、ゆるくつながる。全国のアーティストの友人と連帯:ユニット、music unitedはそんな想いから生まれたものだ。悲観的には思っていない、むしろ楽観している。自分にはライブがある。だめならそこに戻ればいい。ライブがあると思うと気が楽になる。ファンがアーティストを支える新しい形はこれから生まれてくるに違いない。

そんな感じの答えだったように想う。いや実は、もっともっとながく語ってくれた気がするのだが、圧倒されてそれほど覚えていない。ごめん。

なんというかな、この現場の雰囲気をもっと大勢の人に知ってもらいたいなと想った。

次回は撮影も録音も自由な形でできたらいい。そういう芸能の仕組みにも風穴が開けられるに違いない。ルネサンスなんだから。様々な形で対話を続けてほしい。

P.S. あ、おいしいサンドイッチ。食べ残してきてしまったわ。

#COYOTEいい感じ。君が気高い孤独なら がすき。


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